「悪女もの」映画、オススメ10本
VERONICA LAKE, STAR OF THE SILVER SCREEN 1940S / roberthuffstutter
1、「アデルの恋の物語」(1975年)監督フランソワ・トリュフォー
フランスの文豪ヴィクトル・ユゴーの娘アデルが、たった一度、関係を持っただけの英国人中尉に延々と執着し続ける姿を描いた、巨匠フランソワ・トリュフォー監督の名作です。周囲の目はおろか相手の姿すら見えなくなってしまったアデルの妄執は、正に「狂気の恋」なのですが、次第に私たちすべてが抱く「恋心」の本質を照らし出して行きます。
美しさと鮮烈な演技を見せた、現代フランスを代表する女優、イザベル・アジャーニの登場は衝撃的でした。もし未見の方がいらしたら是非ご覧ください。
2、「ジェラシー」(1980年)監督ニコラス・ローグ
退廃の都ウィーンを舞台に、テレサ・ラッセルが演じる、自殺未遂を犯した情緒不安定だが魅力的な女に、精神分析医の男が翻弄されて行きます。共演は「サイモンとガーファンクル」のアート・ガーファンクルという異色のキャスティング。
時制が錯綜し、少しずつ謎が解き明かされるミステリアスな語り口が魅力的な、「赤い影」等で知られる映像派、ニコラス・ローグの最高傑作です。
3、「白いドレスの女」(1981年)監督ローレンス・カスダン
さえない弁護士(ウィリアム・ハート)は、真夏の蒸し暑い夜に出会った魅力的な人妻(キャスリーン・ターナー)から夫殺害計画に誘われ、破滅の道を歩み始める、エロティックなサスペンス映画です。
「スター・ウォーズ」や「インディ・ジョーンズ」シリーズ等の名脚本家、ローレンス・カスダンの監督デビュー作ですが、脚本・演出・演技、いずれも見事で、フィルム・ノワールとして、ほぼ完璧な出来映えです。
「悪女映画で1本だけ」と言われたら、この作品をオススメしたいほどです。
4、「ヘカテ」(1982年)監督ダニエル・シュミット
北アフリカの砂漠の街を舞台に、美しく謎めいた人妻(ローレン・ハットン)との恋に運命を狂わされる若い外交官の姿を、ダニエル・シュミットがスタイリッシュに描きます。
男の振り回される様は「精神的SM」とすら言える感じで、ラストのヒロインの微笑みが「男女の間に横たわる深い溝」を鮮やかに炙り出します。
5、「疑惑」(1982年)監督野村芳太郎
夫に対する保険金殺人の疑いをかけられた女(桃井かおり)と女弁護士(岩下志麻)の心理戦を描く、松本清張原作の裁判ミステリー映画です。感情過多に陥り、話の整合性が失われがちな日本映画の悪癖を論理で抑えて、日本映画の情緒とアメリカ映画のロジックを両立させた秀作となっています。
名作「砂の器」の野村芳太郎監督による映画ですが、この作品こそ、松本清張作品の映画化の最高傑作ではないかと思います。
6、「ブラックウィドー」(1987年)監督ボブ・ラフェルソン
富豪の男性と結婚しては次々と殺害して、巨万の富を築いて行く謎の女(テレサ・ラッセル)と、それを追い詰めて行く女捜査官(デブラ・ウィンガー)を描いた秀作サスペンス映画です。「男と女の関係」よりも「女同士のプライドと戦い」に焦点を当てた視点が新鮮で、再評価されるべき作品でしょう。
ボブ・ラフェルソンの監督作品では、現代アメリカ文学の名作をジャック・ニコルソンとジェシカ・ラング主演で見事に映画化した「郵便配達は2度ベルを鳴らす」(1981年)もオススメです。
7、「愛という名の疑惑」(1992年)監督フィル・ジョアノー
精神科医(リチャード・ギア)が、美しい患者(キム・ベイシンガー)の関係する殺人事件に巻き込まれて行く、典型的なファム・ファタールもののサスペンス映画ですが、脚本のツイストと女優たち(キム・ベイシンガーとユマ・サーマン)の演技が優れています。
有名な「氷の微笑」と同時期に公開されましたが、こちらの方が印象に残りました。
8、「蜘蛛女」(1993年)監督ピーター・メダック
マフィアと内通している悪徳刑事(ゲイリー・オールドマン)は、マフィアの女殺し屋(レナ・オリン)を護送する任務を負いますが、それが破滅の始まりになります。暴力的で狡猾で、史上最強と言っても良いレナ・オリン演じる悪女のパワフルなスゴさは、ほとんど爆笑の域に達しています。
それまでの、「謎めいて妖艶」といった「悪女」のイメージを完全に覆した、新たな「悪女」の登場です。
9、「誘う女」(1995年)監督ガス・ヴァン・サント
ひたすら「有名になる」ことを望み、そのために夫が邪魔になった地方局のお天気お姉さん(ニコール・キッドマン)は、色仕掛けで高校生に夫を殺させようとしますが…。
実際の事件をベースにしたサスペンス映画で、ニコール・キッドマンが演技派として飛躍するきっかけとなりました。「悪女」と呼ぶには、あまりにセコイ功名心と浅知恵が、苦い笑いを誘います。
10、「Uターン」(1997年)監督オリバー・ストーン
マフィアに借金を返すためにラスベガスに向かっていた男(ショーン・ペン)が、途中で立ち寄った田舎町で謎めいた美女(ジェニファー・ロペス)に出会ったことから、裏切りと殺戮のゲームに巻き込まれて行く、社会派オリバー・ストーンには珍しい、タイトなサスペンス映画です
共演陣も、ニック・ノルティ、ビリー・ボブ・ソーントン、ホアキン・フェニックスなどの演技派が揃い、ジェニファー・ロペスにとって、女優としてのベスト作品でしょう。
以上、「悪女もの」映画のオススメを、いくつかご紹介してみました。
参考になれば幸いです。
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