1、『フレンチ・キス』解散のニュース
今朝、インターネットでニュースを見ていたら、「『フレンチ・キス』が11月に解散コンサート」というニュースを見かけました。『フレンチ・キス』は、AKB48のメンバー柏木由紀、高城亜樹、倉持明日香の三人で2010年に結成された派生ユニットです。
プロデューサーの秋元康によると「AKB48のユニットの中でも、最も女の子らしい清純派の3人組」だそうで(最近、何かスキャンダルがあった気もしますが…)、「親に紹介したい3人組」というキャッチフレーズで売り出され、6枚のシングルをリリースしています。
この8月に、メンバーの一人である倉持明日香(元ロッテのプロ野球選手で「炎のストッパー」として有名だった、倉持投手のお嬢さんです)が、スポーツキャスターを目指すためにAKBを卒業したのを機に、解散することになったようです。
2、フレンチ・キスは「軽いキス」?
私は、「親に紹介したい3人組」というキャッチフレーズと共に、『フレンチ・キス』というグループ名を聞いた時は、ちょっとビックリしました。フレンチキスとは舌を絡め合うディープキスのことですから、ずいぶん大胆な名前だし、「親に紹介したい3人組」というキャッチフレーズには合っていないのでは?と思ったからです。
ところが、TVの歌番組に出演した彼女たちは、フレンチキスの意味を聞かれて「唇を触れ合わせるだけの、軽いキスのこと」だと説明していたのです。
私は知らなかったのですが、日本の少女マンガや女性雑誌では、フレンチキスという言葉が「軽いキス」の意味で使われていたのですね。
「フレンチキス」という表現は、フランスと対立していた頃のイギリス人が、ディープキスを「フランス人が好む様な下品なキス」という揶揄を込めて「フレンチキス」と呼んだ事が始まりだと言われていますが、日本では「フレンチ」という語感から、逆の意味に使われるようになってしまったのでしょう。
(「米語にはフレンチキスに軽いキスの意味がある」という説があるようですが、メグ・ライアン主演のアメリカ映画『フレンチ・キス』を観ても、ディープキスの意味で使われていますね)
3、アイロニーとしての「フレンチ・キス」
AKB48のプロデューサーでもある秋元康はクレバーな人物ですから、「フレンチキスという言葉が、日本では本来の意味とは逆の可愛い意味で使われている」という皮肉な状況を十分理解した上で、あえて、『フレンチ・キス』というグループ名を付けたのではないかと思います。
「表面的に清純な『お嬢様』に見えても、女の子はそれだけじゃないよ」というアイロニーを込めているのではないでしょうか?
A kiss / DenisDenis
An enthusiastic kiss / pedrosimoes7
以前、『フレンチ・キス』のメンバーが外国旅行をする旅番組があったのですが、彼女たちが旅先で、外国の人に、自分達のグループ名を「フレンチ・キスです」と名乗っているのを観て、私はドキドキしてしまいました。今思うと、まんまと秋元康の戦略に乗せられていたのでしょう。
4、フレンチ・キスからノルウェイの森へ
このフレンチ・キスように、外国の言葉や概念が、日本では、本来の意味とは違うイメージで流通してしまっている事は、時々あります。
私が「フレンチ・キスの勘違い」について、お話しようと思ったのは、このような「本来の意味と日本での解釈のズレ」を、見事に象徴させている作品があるからなのです。
それは、村上春樹の大ベストセラー小説「ノルウェイの森」です。
次回は、そのお話をしたいと思います。