1、初めて泣いた「タイタニック」
1997年12月、世界最大のヒットとなった「タイタニック」を女の子で満員の映画館で観ながら、私はボロボロ泣いていました。
恋愛映画を観て泣いてしまったのは、初めての経験でした。
涙が止まる前に明るくなり始めた劇場で、私は泣いていることが周りバレないかと焦っていましたが、前の席にいるカップルの男も泣いていたので少し安心しました。
劇場内を見回すと、けっこう泣いている男性もいます。
その時、私は気が付きました「この作品は恋愛映画における、吊り橋理論の実践ではないだろうか?」と。
The Titanic / State Library of Queensland, Australia
Cruise Ship HDR – 52 / Kabacchi
2、吊り橋理論
「吊り橋理論」をご存知でしょうか?近年はかなり有名になった学説なので、知っている方も多いと思います。
吊り橋理論とは、人は生理的な興奮と恋愛という感情を混同してしまうという心理学の考え方です。
対岸にいる人を見つめながら吊り橋を渡っていると、いつの間にか吊り橋の向こう側にいる人を好きになってしまう、というのです。
吊り橋が怖くてドキドキしているという生理的現象を、対岸にいる人が好きでドキドキしている恋愛感情だと、脳が勘違いしてしまうのです。
本当かよ?と思いますが、これはカナダの心理学者が1974年に実証実験に基づいて発表した学説で、ほぼ正しいと考えられています。
3、衝撃の「サブリミナル・マインド」
私が吊り橋理論を知ったのは「サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ」(下條 信輔:中公新書)という本からでした。
これは、認知科学者である著者の、東大における心理学の講義録をまとめた本なのですが、人間の感情のかなりの部分が、じつは主体的な思考などではなく、生理的物理的反応に過ぎない、という事実を解き明かした衝撃の本なのです。
この本を読んでいると、それまで確実なものだと思っていた「自我」や「自意識」といったものが、真夏の道路に落としたアイスクリームのように溶けてゆく感じがします。
私たちは自分たちで思っている以上に、「考える葦」ではなく「考えない機械」なのだ、という現実を突きつけられます。
講義録なので読みやすく、しかも知的興奮にあふれた一冊なので、ぜひ読んでみて下さい。
4、アクション映画「タイタニック」
映画「タイタニック」は、豪華客船タイタニック沈没の悲劇と主役二人の悲恋を重ね合わせたドラマです。タイタニックの処女航海のように、一夜だけ輝きそして失われた二人の愛に、世界中の観客が涙を流しました。
恋愛映画の人気投票をしたら、今でもかなりの上位にランクされるのではないでしょうか?
ところが、改めて「タイタニック」を観てみるとレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの恋愛描写は、いかにも型どおりな上に、ろくに描かれていないのです。
映画の大部分は、沈みゆくタイタニックから何とか脱出しようとする二人のサスペンスとアクションで占められています。
監督は「ターミネーター」や「エイリアン2」でヒットメイカーとなったジェームズ・キャメロンですから、サスペンスとアクションはお手のものです。浸水した客室から二人が何とか逃げ出そうとするあたりはものすごい緊張感で、何度観てもハラハラドキドキします。
5、吊り橋理論による恋愛映画
そう、私たちは、主役二人のサスペンスとアクションにドキドキしている内に、いつの間にか二人のラヴロマンスにドキドキしていると、勘違いさせられてしまっていたのです。
「タイタニック」を上映している映画館では、「男が泣いている」光景がよく見られました。 恋愛映画にカップルはつきものですが、大抵は女性だけが泣いて、男性の方は優しく肩を抱いたりしているものです。
ところが「タイタニック」では男も一緒に鼻水を垂らしたりしていて、その後のデートプランの障害にならないかと、心配になったものです。
私もそうですが、男は一般に「恋愛ドラマで泣く」ことには、かなり高い心理的障壁があるものなのです。
この「タイタニック」の男性観客に対する破壊力も、吊り橋理論で説明することができます。
本当は「恋愛ドラマ」に心を揺さぶられていたのではなく、「サスペンスとアクション」に心を揺さぶられていたので、男性にとっても抵抗感が少なかったのです。
Pondside / mrhayata
谷瀬の吊橋 – Suspension bridge of Tanize // 2010.07.28 – 06 / Tamago Moffle
6、アクション監督によるラヴロマンス
ジェームズ・キャメロンが、吊り橋理論を意識していたとは思いません。
ですが「アクションは得意だがドラマは苦手」だと評されていたキャメロン監督が初めて手掛けるラヴロマンスの作り方としては、「決死のアクションとロマンスを同時に描く」というのは、実に上手い戦略だったと思います。
「だから、泣いてもしょうがないんだ!」と自分に言い聞かせながら、私は明るくなった映画館で、ティッシュを取り出して、さかんに鼻水をかんでいました。
隣からの視線が、なんとなく冷めているように感じたのは、気のせいでしょう。
その日は私もデートだったのですが、二人で喫茶店で軽い食事をした後は、それぞれ真っ直ぐ家に帰りました。
そんなことあるのかなあ・・・ゴメン笑
思いっきり走ってドキドキしてると、
恋に落ちる確率が高いか?というと、信じがたい!
平成になって、トンデモ理論が多いように思い、
かつてのカルト事件ブームが定着してしまったんだろうか?
コメントありがとうございます。
確かに、走ってドキドキしても恋の確率は高まりませんよね。そうではなく「恐怖やスリル」に対するハラハラドキドキを「恋」に対するハラハラドキドキと混同してしまう、という理論です。みんながデートでお化け屋敷に行ったりジェットコースターに乗ったりするのは、無意識のうちにそれを知っているからでは?
「吊り橋理論」は平成よりずっと前の1974年に発表された理論で、トンデモ扱いはされていないと思います。もっとも「心理学は再現・検証を正確に行うのが難しいので、そもそもトンデモ性が高い」と批判する人はいますね。
しかし、吊り橋理論などの背景にある思想は「人間は機械である」という発想なので、カルト・ブームの背景にある「精神主義や神秘主義」とは対極にあるのではないかと思います。
じつは、吊り橋理論などは序の口で「サブリミナル・マインド」には、もっと「信じがたい」理論がたくさん紹介されています。ご自分で読んでみて、眉に唾をつけてみるのも、面白いのではないでしょうか?
なるほど。
でもね?カルト・ブームって、一見、神秘主義を表に出して人寄せして、
実際には、人間や動物の精神性を人工的に自由にしてしまうってとこを、
危険視して、「カルト」と蔑称されたんだと思う。。
でも、今、人間脳他自然界の生態系にDNAはじめ、脳神経血管関門を通過する薬物研究開発で生命科学の聖域を土足で踏み込む、それも巨大資本を狙ったテロ輩が、乱用する時代になって、、テロが圧勝し、テロリズムをターゲットの家族を洗脳ロボトミー化することで、自身はホワイトホースに居座ったまま、
まるで!箱庭のような世界を自由に作る完全犯罪時代となってしまってる。。
いくら、宇宙衛星を使って、監視しても、、彼らが暗躍予備工作布石した時期には、それらがない、というより、、阪神大震災から破壊されてるから、、
その監視システムは本当のテロリスト黒幕には全く痛くも痒くもない。。
個人情報保護法で、家族でもバラバラにされても手のうち用がないという完全なファシズム社会が確立されてしまってる。。そう思われません?
サブリミナル効果って、、阪神大震災以降、急増してる芸能界級の美男美女、生活感のないまるでマリア像のような美人が急増してるように思うんだけど、、
これって、、実際のマリアは実生活の母性そのものなんだというカトリック文化があったのが、
阪神大震災をきっかけに?オウム事件をきっかけに?頓挫してしまったように思える。。
マリア像を描いたり、彫刻したりした人は、
現実社会ではあり得ない極限の美貌をアートで作り上げたわけなんでしょうが、、、
これに騙されて結婚し、家族破壊する友人をあまりに多く見てるから、今の若い人たちが結婚しようとしなかった、、ってことじゃないのかな?
若いと言っても、もう、30代後半以上になってると思うけど。。